「llms.txt」とは?AI時代の新しいWebサイト標準 – 2つのアプローチを徹底解説

AI技術の急速な発展に伴い、Webサイト運営者の間で「llms.txt」というファイルが注目を集めています。しかし、実はこのllms.txtには2つの全く異なるアプローチと目的が存在することをご存知でしょうか?

今回は、混在している情報を整理し、それぞれの目的・記述方法・活用法を詳しく解説します。あなたのWebサイトにとって、どちらのllms.txtが必要なのか、あるいは両方必要なのかを判断する手助けとなるでしょう。


llms.txtとは何か?2つの異なる目的を持つファイル

llms.txt(エルエルエムズ・テキスト)は、**Large Language Models(大規模言語モデル)**に関連するファイルですが、現在、その目的と解釈において2つの異なるアプローチで使用されています。

  1. 🔄 情報提供型アプローチ: AIに対してサイトの情報を効率的に提供するためのファイル
  2. 🚫 アクセス制御型アプローチ: AIクローラーによる学習データ収集を拒否・制御するためのファイル

この2つのアプローチは目的が正反対であり、記述方法も全く異なります。それぞれの詳細を見ていきましょう。


1. 情報提供型llms.txt:AIがサイトをより深く理解するために


概要と背景

この「情報提供型llms.txt」は、2024年9月にAnswer.AIのJeremy Howard氏によって提案された新しい仕様です。その目的は、AIがWebサイトの情報を効率的かつ正確に理解できるよう支援することにあります。

公式GitHubで示されている背景には、以下のような課題がありました。

  • LLMの**コンテキストウィンドウ(一度に処理できる情報量)**は、ほとんどのWebサイト全体を処理するには小さすぎます。
  • 複雑なHTMLページをLLM向けのプレーンテキストに変換するのは困難な場合があります。
  • AIは、簡潔で専門的な情報を一箇所にまとめた形で受け取る方が、より効果的に情報を理解し、利用できます。

このアプローチは、AIに積極的にサイトの情報を伝え、より適切な形でコンテンツが活用されることを目指しています。

記述形式(Markdown)

情報提供型llms.txtは、人間にとってもAIにとっても読みやすいMarkdown形式で記述されます。

# プロジェクト名

> サイトの概要(簡潔な説明)

詳細な説明(任意)

## セクション名

- [リンクタイトル](URL): オプションの説明

## Optional

- [補足的なリンク](URL): 短いコンテキストが必要な場合にスキップ可能

 

実装例

例えば、技術系ブログの場合、以下のように記述できます。

# Tech Blog

> 最新のテクノロジートレンドとプログラミング技術を紹介するブログです。

週1回新しい記事を公開し、主にエンジニア向けのコンテンツを提供しています。

## 主要コンテンツ

- [記事一覧](https://example.com/articles/): 全技術記事
- [チュートリアル](https://example.com/tutorials/): 実践的ガイド
- [API文書](https://example.com/api/): 開発者向けリファレンス

## リソース

- [サイトマップ](https://example.com/sitemap.xml)
- [著者について](https://example.com/about/)

## Optional

- [アーカイブ](https://example.com/archive/): 過去記事

 

活用例と採用企業

この情報提供型llms.txtは、AIの能力を最大限に引き出すための重要なツールとして期待されています。

  • NotebookLMでの活用: GoogleのNotebookLMのようなツールにllms.txtファイルを読み込ませることで、サイト内容の音声サマリー生成、FAQの自動作成、APIクライアントライブラリの自動生成、対話形式での学習コンテンツ作成などが可能になると言われています。
  • 開発者向けドキュメント: AnthropicやVercel、FastHTMLといった企業は、APIやSDK、技術文書の構造化にこのアプローチを採用し、LLMが効率的にドキュメントを理解し、開発者に適切な情報を提供できるよう取り組んでいます。

2. アクセス制御型llms.txt:AIによる学習データ収集を制御するために


概要と背景

こちらの「アクセス制御型llms.txt」は、ChatGPTやNovelty Inc.などで紹介されているアプローチで、AIクローラーによるWebサイトの学習データ収集を制御することを目的としています。

背景には、Webサイト運営者が抱える以下の懸念があります。

  • 著作権保護: 自社コンテンツが無断でAIの学習データとして利用されることへの懸念。
  • ブランド保護: AIによる情報生成が、意図しない形で自社ブランドのイメージを損なう可能性。
  • 情報漏洩防止: 機密性の高い情報がAIの学習を通じて外部に漏れるリスク。

このアプローチは、robots.txtが検索エンジンのクローラーを制御するのと同様に、生成AIのクローラーに対してアクセス許可・拒否を明示的に伝える役割を担います。

記述形式(robots.txt形式)

アクセス制御型llms.txtは、robots.txtと非常によく似た構文で記述されます。

User-agent: [対象AIクローラー]
Disallow: [拒否するパス]
Allow: [許可するパス]

 

主要AIクローラーのUser-agent例

AIサービスUser-agent
すべてのAI*
ChatGPT (OpenAI)GPTBot
Claude (Anthropic)ClaudeBot
Google AIGoogle-Extended
Common CrawlCCBot

記述パターン例

  • パターン1: 全面拒否

    User-agent: *
    Disallow: /
    

     

    (すべてのAIクローラーに対して、サイト全体のアクセスを拒否します。)

  • パターン2: 特定AI拒否

    User-agent: GPTBot
    Disallow: /
    
    User-agent: ClaudeBot
    Disallow: /
    

     

    (GPTBotとClaudeBotのみ、サイト全体のアクセスを拒否します。)

  • パターン3: 部分的許可(特定のディレクトリのみ許可)

    User-agent: *
    Disallow: /
    Allow: /blog/
    Allow: /public/
    

     

    (すべてのAIクローラーに対してサイト全体を拒否しますが、/blog//public/ディレクトリ内は許可します。)


llms.txtの設置方法とどちらのアプローチを選ぶべきか


llms.txtの設置方法と確認手順

どちらのアプローチのllms.txtも、基本的にはウェブサイトのルートディレクトリ直下に配置します。

  1. ファイル作成: テキストエディタで内容を記述し、ファイル名を llms.txt、文字コードを UTF-8 で保存します。
  2. アップロード: Webサーバーのルートディレクトリに配置します。URLは https://yourdomain.com/llms.txt のようになります。
  3. 確認: ブラウザで https://yourdomain.com/llms.txt にアクセスし、記述した内容が正しく表示されることを確認します。

WordPressでの実装

WordPressをご利用の場合、情報提供型のアプローチであれば、専用プラグイン「Website LLMs.txt」の利用が可能です。このプラグインを使うことで、管理画面から簡単にllms.txtファイルを生成・管理できます。

どちらのアプローチを選ぶべきか?

あなたのWebサイトの目的とコンテンツ戦略によって、どちらのllms.txtを優先的に導入すべきかが異なります。

✅ 情報提供型を選ぶべきケース

  • API文書やSDKなど、開発者向けのドキュメントを提供している。
  • 技術ブログや専門性の高い記事を運営しており、AIによる正確な情報理解と活用を期待したい。
  • NotebookLMのようなAIツールで、サイト内容の自動要約やFAQ生成に役立てたい。
  • 将来的なAIとの連携や、AI経由でのトラフィック獲得を見据えている。

🚫 アクセス制御型を選ぶべきケース

  • 有料コンテンツや会員限定記事など、収益に関わるコンテンツを提供している。
  • 独自ノウハウや企業秘密など、競合他社に知られたくない情報が含まれている。
  • 著作権保護が最重要であり、AIによる学習を明確に拒否したい。
  • 情報資産の保護が最優先であり、情報漏洩のリスクを最小限に抑えたい。

両方を設置する場合

実は、情報提供型のllms.txtを設置しつつ、robots.txt(またはアクセス制御型のllms.txt)でAIクローラーの制御を記述するという併用も可能です。

  • llms.txt(情報提供): AIにサイトの概要や主要コンテンツを伝える
    # My Company
    
    > 当社は○○分野の専門サービスを提供しています。
    
    ## 公開情報
    
    - [サービス概要](https://example.com/service/)
    - [会社情報](https://example.com/about/)
    

     

  • robots.txt(アクセス制御): AIクローラーにアクセス制限を指示
    User-agent: GPTBot
    Disallow: /private/
    Disallow: /members/
    
    User-agent: *
    Crawl-delay: 1
    

     

このように、両者を使い分けることで、AIとの連携を最適化しつつ、自社の情報資産を保護するというバランスの取れた戦略を実行できます。


LLMO(Large Language Model Optimization)との関係と今後の展望


LLMOとは?

llms.txtは、**LLMO(Large Language Model Optimization)**対策の一環として重要な位置を占めています。LLMOとは、大規模言語モデルに対する最適化のことで、従来のSEO(検索エンジン最適化)に加えて、AI時代に必要な新しい最適化手法を指します。

LLMOには以下の3つの柱があります。

  1. llms.txt実装: サイト構造の明確化とAIへの情報提供
  2. 構造化データ: AIが理解しやすいデータ形式(Schema.orgなど)の活用
  3. コンテンツ最適化: AIが情報を効率的に抽出しやすいようにコンテンツを整理

情報提供型のllms.txtは積極的なLLMO対策、アクセス制御型は消極的なLLMO対策と位置づけられます。

注意点とベストプラクティス

  • 現在の標準化状況: llms.txtはまだ実験的段階であり、公式なRFC(Request for Comments)等での標準化はされていません。AI企業による対応状況にばらつきがあるため、今後の動向に注意が必要です。
  • セキュリティ考慮事項: llms.txtファイルには、機密情報や個人情報は絶対に記載しないでください。公開されているURLやページ情報のみを含めるようにし、技術的な保護策と併用することが前提です。
  • 定期的な見直し: AI技術は急速に進化しています。llms.txtの内容も、定期的に見直し、最新のAIクローラーや活用方法に合わせて更新することが重要です。

今後の展望

llms.txtは、AI時代のWebサイト運営において重要な役割を果たす新しい標準となる可能性が高いです。

  • 短期的な予測(2025年内): 主要AI企業による対応の拡大、WordPressなどのCMSでの標準サポート、日本国内での認知度向上が見込まれます。
  • 長期的な予測(2026年以降): Web標準としての確立、検索エンジンでの考慮、新しいAIサービスでの活用拡大が期待されます。

あなたのWebサイトはAI時代に対応できていますか?

llms.txtは、AI時代のWebサイト運営において重要な役割を果たす新しい標準です。今回解説したように、情報提供型アクセス制御型という2つの異なるアプローチが存在することを理解し、自社の方針に応じて適切な実装を選択することが極めて重要です。

AI技術の発展は止まることがありません。今からllms.txtの導入を検討し、AI時代に対応したWebサイト運営を始めてみてはいかがでしょうか?あなたのWebサイトの価値を最大化し、AIとの共存を最適化するための第一歩となるはずです。

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